はじめに,本研究室の特徴を3つの学位プログラムに分けて述べます。

【博士前期課程】
教育学学位プログラム次世代学校教育創成サブプログラム数学教育領域(=次世代学校教育SP)(旧:教育研究科)

 全国の教員養成系の大学院が教職大学院にシフトし,教科の内容(数学)よりも教員としての一般的な側面を重視する傾向にある中で,本学の次世代学校教育SPは,数学教育(算数教育を含む)をより前面に出した教育・研究活動を展開し,数学教育に強い教員の養成を主な目的としている点に特徴があります。大学院の授業は数学教育や数学の内容を中心として行っています。大学院生も研究活動を数学教育に焦点化して行っており,過去の修士論文のテーマにある通り,様々な内容に取り組んでいます。次世代学校教育SPを修了することで,より自信を持って算数・数学を教えることのできる教員,そして研究のできる教員になることができます。もちろん専修免許状を取得することもできます。
 次世代学校教育SPには,筑波大学からはもちろんのこと,全国各地の様々な大学から学生が来ています。学類・学部も,筑波大学であれば数学類や教育学類など,他大学であれば教育学部や理学部・工学部など多様です。「数学類や理学部で数学について勉強しているけど,数学教育についてもっと深く学びたい」や「教育学部で数学教育について研究していて,さらにその研究を深めたい」など,様々な問題意識を歓迎しています。むしろそうした多様な問題意識や経験を持った大学院生が同じ場で学ぶからこそ, 互いの学びがより充実したものになると考えています。現職教員で教育委員会の派遣制度を活用して本大学院に進学される方もいます。
 なお,次世代学校教育SPでは,純粋数学を専門とする教員の研究室に所属し,純粋数学の内容について研究して修士論文を書くことも可能です。その場合であっても,上記のように数学教育について深く学べることや専修免許状を取得できることには変わりはありません。
 次世代学校教育SPやその前身である教育研究科の修了生の多くは,現在,数学科の教員として全国各地の中学校や高等学校で活躍しています。他にも,小学校の教員になっている方や,教科書会社など数学教育に関連した企業に勤めている方もいます。また,後にも述べる博士後期課程に進学し,その後,大学等の研究機関で教育・研究に従事している方もいます。
 都道府県や政令指定都市の教育委員会の多くは,大学院進学者・在学者に対して,教員採用試験の合格を留保する等の特例を設けています。例えば,大学4年生のときに教員採用試験に合格して大学院に進学した場合,あらためて教員採用試験を受験する必要はなく,大学院の修了後にそのまま教員として採用されるという仕組みがあります(前期1年時に教員採用試験を受験する院生もいます)。こうした特例があるように,専修免許状を有する専門性のある教員は,教育現場でも求められています。

【博士前期課程】
教育学学位プログラム教育基礎科学サブプログラム(=教育基礎SP)(旧:人間総合科学研究科)

 教育基礎SPは,上記の次世代学校教育SPとは異なり,大学や研究機関等で教育・研究に従事する研究者の養成を念頭に置いており,その基盤を築くことを目的としています。大学院生の研究テーマは数学教育に関するものですが,授業は教育制度学や教育方法学などより一般的な教育学の内容が中心となります。次世代学校教育SPで開講されている授業を受講し,数学教育について学ぶことも可能です。
 大学院生の出身大学については,次世代学校教育SPと同様に様々です。次世代学校教育SPの大学院生とも授業やゼミを通じて交流があります。
 教育基礎SPの修了後は,基本的には博士後期課程に進学し,引き続き研究を行うことが期待されています。進学せずに学校等の教育機関や企業に就職する方もいます。

 次世代学校教育SPと教育基礎SPのどちらに進学するか迷う際には,ぜひ一度本研究室の教員にご相談ください。なお,教育基礎SPに出願する場合には,指導を希望する教員に事前に連絡を取ることが必要となっています。

【博士後期課程】
教育学学位プログラム(旧:人間総合科学研究科)

 博士後期課程の教育学学位プログラムは,大学や研究機関等で教育・研究に従事する研究者の養成を目的に掲げています。各自が自立的に研究を行い,日頃のゼミでの発表や議論を通じて,研究の内容を深めていきます。さらに,国内外の学会での発表・討議や,学術誌上での論文発表を通じて,自律した研究者としての素養を身に付けていきます。最後に,研究の成果を博士論文としてまとめることが期待されています。
 学生の出身大学院については,本学の次世代学校教育SPや教育基礎SPが中心です。どちらのSPの方が博士後期課程に進学しやすいということはありません。他大学の修士課程・博士前期課程からの進学もあります。修士課程・博士前期課程の修了後,教員等を経験し,それから博士後期課程に進学するケースもあります。博士前期課程と同様に,様々な問題意識や経験を持った大学院生が集まることを歓迎しています。
 博士後期課程の大学院生には,経済的な支援が様々な面からあります。日本学術振興会(JSPS)の特別研究員に採用され,国から研究奨励金(給与)と研究費を支給されながら研究している大学院生もいます。また,筑波大学は科学技術振興機構(JST)の次世代研究者養成プログラムに採択されており,本研究室にも研究奨励費を支給されている大学院生がいます。その他にも,国際学会に参加して研究発表を行う際には旅費の一部が支給される等の仕組みがあります。こうした支援を通じて,大学院生が経済的により安定して研究活動に専念できるような環境の確保が行われています。
 博士後期課程の出身者は,本ウェブサイトの「歴史」のページにある通り,全国各地の大学や研究機関で活躍しています。我が国の数学教育研究の発展に加えて,大学での教員養成や地域の授業研究会や教育研究会での指導助言を通じて,数学教育の実践の向上に貢献しています。

 

大学院の入試情報や説明会

 大学院の入試に関わる情報(実施時期や試験科目など)については,教育学学位プログラムのホームページをご参照ください。
 例年6月に大学院の説明会を行っています。教員から学位プログラムの概要について説明があるとともに,現役大学院生との相談会もあり,本研究室についてより深く知ることができます。年度によって開催の時期が異なったり,追加で開催したりすることがありますので,適宜,教育学学位プログラムのホームページをご参照ください。
 個別の相談も随時受け付けています。これまでも対面あるいはオンラインで個別の相談を受けてきていますので,気兼ねなく本研究室の教員にご連絡ください。

おわりに

 本ページでは,本研究室の特徴を3つの学位プログラムに分けて紹介しました。上記のことに加えて,本研究室では例年3月に上越教育大学と合同で研究発表会を開催しています。
 これまで主に学業や研究の面について述べましたが,交流の面でも充実した時間を過ごすことができます。日頃の授業や院生室での時間だけでなく,スポーツ大会や懇親会を通じて,院生間はもちろんのこと,教員とも交流を深めています。
 最後に,3つの学位プログラムに共通している点は,数学教育に焦点化した教育・研究活動を展開しているということです。ぜひ私たちの大学院に進学して,ともに数学教育について研究しませんか。皆さんとの出会いを楽しみにしています。